貴方の見ているドメインは
このページについて
六
と、鬼倉はすつかり他意のない様子で答へた。
患者の脈を見たり、舌を出させたり、背部を指で押し、打診し、薬を与へたりすること、そんなことは誰にだつて出来る。それからあの、開業医にはぜひとも必要だと云はれている社交的な才能、お世辞を云つたり、砕けた気の置けない態度で抜かりなく会ふ人ごとの心をつかむ――「ふん」と、房一は独言のときに自然と目の前につくり上げるもう一人の自分に向つて冷笑してみせた。
「ハッパさね」
「まだなかなかでせう。永いこつてすよ」
「をかしいから笑つたのだ」
そして、少し横手に身をひきながら、しげしげと房一を眺めた。感慨無量、と云つた態ていであつた。
と、盛子は大げさに滑稽な顔をしてみせた。
真黒い顔の男が傍によつて訊いた。
「さうですか」
男は病人から房一へぎろりと眼を移すと、
と云つた。
「それは勝手だが、あんなもの、温泉と思っちゃいかん」
- 【夏休み旅館情報】
- NLPラーニング&コミュニケーション